代表コラム president column

第37回 「検証を踏まえた課題と対応」

 試行・実証実験によって得られた定性的・定量的データの検証を踏まえ、解決すべき課題が見えてきた。

 まずは、今回の実験ではイメージハンプ※を用いて車両減速の注意喚起を促したが、全体的に歩きやすい道路空間に寄与した傾向はあるものの、裏通りの交通安全性はそれほど高まらなかった、ということ。また、いくつかの場づくりとその活用を実践してみたが、まだまだ歩行者が滞在したくなる魅力的な居場所にはならなかった、ということ。これら交通安全性と居場所づくりが相まって、まち歩きの回遊性が弱い、つまりは魅力が埋没している、という結果になっている。

 今後の展開を考えると、歩きやすい安全な環境づくりのためには、物理的なハンプ※などによる車両の速度規制や、植栽・一部広場化などによる歩行者空間の充実、まち歩きルートの表示などが必要だ。まちなかで滞在できる居場所づくりのためには、民地の広場活用や空き店舗を活用したサードプレイスづくり、あわせて創業希望者と創業スペースとのマッチングなどの方策が期待される。また、より多くの仲間の共感を呼ぶために、共感を広げる組織づくりや共感から実践につなげるシステムづくりが必要だ。そして、まちなかでの人の行動の変化を促す空き地・空き駐車場のマネジメントも必要になろう。

 さらに、この実験に直接的に関わったデザイン会議のメンバーたちの感想や意見として、担い手が大変だった、頑張り過ぎた、という意見がある。このような状態では今後の継続的な取り組みは難しい。官学民がそれぞれの立場で連携し、持続可能な体制を作る必要がある。

 課題山積、やるべきことはたくさん。これらを、できることから目標をもって、年次的、段階的に拡充していく必要がある。

 3月6日には、オンラインで「第2回水戸まちなかデザインシンポジウム」を開催し、今後につながる議論を行った。令和4年度はそれを反映した社会実験などを実施したい。

※ハンプとは、交通安全対策のために、道路の路面に設けられた凸状の部分のこと

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