第50回 「観光振興大会レガシー」
全国商工会議所観光振興大会を水戸で開催する意義は何か。過去2回にわたり、歴史や食文化、ライフスタイルの3つの側面から、私自身の勝手な夢を描かせて頂いたが、さてこの大会を開催することで長期的に残るプラスの影響、レガシーは何だろうか。水戸人や水戸の街にとってのレガシー、また大会参加者や全国へのレガシーについて考えてみる。
まず歴史の観点から。故郷への誇りを醸成する故郷原理主義的歴史観のモデルを提示してはどうか。史実は一つでも、歴史はそれを記述する人の立場によって変わる。多くの日本人が知る幕末維新史は、はっきり言って「司馬史観」に基づいている。水戸っぽなら、水戸視点の幕末維新史を堂々と語りたい。そもそも水戸藩、水戸家とは。水戸学とは何か。その上で、幕末維新とは何だったのか。明治政府とは何なのか。大会では、水戸視点で歴史を考える史跡ツアーや講演会を開催し、またサイトでも紹介してはどうか。そして、大会参加者がそれぞれの故郷なりの歴史観を抱けるきっかけとしたい。さらには、水戸人の語る幕末維新を本にして、少なくとも旧水戸藩で根付かせてはどうか。
次に食文化。大会を契機に、生産者への感謝と、茨城を食べる習慣、さらに地域資源をもっと大切にする文化を発信してはどうか。東日本大震災で私たちは、大量生産大量消費大量廃棄、また遠隔地からの移送に頼ることの問題を実感、コロナ禍も踏まえ、地産地消、
割高でも地元調達の大切さを学んだ。
大会では身土不二の観点から、サイトにグルメページを開設し、水戸や茨城の誇る食文化を味わうグルメツアーや、発酵食品づくりの体験会を開催。また農人形を大会参加者に配布し、地域内経済循環の大切さを再認識して頂こう。そして、食文化のみならず地域資源を
大切にする気持ちを込めて、かつて三の丸庁舎にあった大きな農人形を復元・設置するのも面白い。また、水戸の茶道と言えば石州流。大会参加者にお点前を振る舞い、以降、水戸への単身赴任者が赴任中に石州流をマスターできる教室をスタートさせてはどうか。
そしてライフスタイル。水戸人が水戸暮らしを当たり前のように楽しむ。水戸の歴史、文化、風景、習慣、資源、風土そのものを満喫する。そのことの素晴らしさを認識し、そんな暮らし振りを実践、発信する。水戸城、偕楽園、千波湖、芸術館、新市民会館、アリーナなどが当たり前のように私たちの暮らしの中にある。まさに水戸の街を使い倒す暮らし振りをサイトで紹介したい。そして、大会をきっかけに変わり始める私たちの暮らし振りを、新しい水戸の日常風景とし、ご覧頂きたい。
レガシー。それは、後の時代の後輩たちが「水戸っぽって格好いいね!」と言ってくれること。来水する多くの観光客が「この国に水戸という街があって良かった」と言ってくれること。これは、観光振興大会と言うよりも、私に残された人生の宿題かも知れない。