代表コラム president column

第59回 「益城町に行っていました」

 先月のこの欄で、全国の都市からの視察やヒアリング、相談などについて少し触れたが、10月に相談のあった熊本県の益城町から、地域おこし協力隊が主催する「ましきまちづくりスクール」にお呼ばれした。

 益城町は、2016年の熊本地震で大きな被害のあった町だ。町役場近くの木山交差点を中心とする木山地区は、良好な住宅市街地としての発展が期待されていたが、地区を斜めに横断する断層により、宅地の擁壁や盛土の崩壊が生じ、家屋も倒壊した。復興計画では、土地区画整理事業により商業業務機能の集積した都市拠点としての再生がうたわれている。地域の活性化、まちなかの再生はどの市町村でも大きな課題であるが、災害を経験したまちではマイナスからの出直しで、一層の困難が予想される。

 まちづくりスクールの対象エリアは、木山地区の中でも交差点から南の町道横町線沿道500m。整備が進み、完成形が見えつつあるこの街路空間の実験的活用案をチームで考え、実践しよう、というプログラム。シンポジウム(11月と1月)とスクール(12月と1月)が交互に開催され、11月の第一回シンポジウムでキックオフ。私は12月のスクールで、水戸のまちなか再生に向けた取り組み事例のレクチャーと、地元熊本大学の星野裕司教授との討論、受講生たちとの意見交換に、一泊二日で参加した。

 受講生はまちづくりに関心のある社会人や学生。全体に意識の高い若者ばかり。教授や私からのアドバイスはあったものの、どのチームも2日間のスクール期間中に、コンセプトから具体的な事業提案まで、中身の濃いプレゼンをしてくれた。今後の実践・具体化が楽しみだ。

 受講生が優秀であったことに加え、主催側の地域おこし協力隊の2人が素晴らしかった。それぞれ建築と土木が専門で、熊本大学の大学院出身。地域おこし協力隊は、住民票を異動し、地場産品の開発・販売・PRなどの地域おこし支援や、農林水産業への従事、住民支援などの「地域協力活動」を行いながら、その地域への定住・定着を図る取り組みだ。隊員は各自治体の委嘱を受け、任期はおおむね1年から3年。具体的な活動内容や条件、待遇などは各自治体によりさまざまのようだが、益城町では、2人を町の復興、まちなか再生に充てている。

 高い志を持ち、自身の専門性を生かしつつ頑張っている彼らが、任期終了後、益城町で新たな事業を起こし、将来にわたって町の未来に貢献し続けることが期待される。

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