代表コラム president column

第66回 「水戸市民会館が開館して1年」

 新しい市民会館がオープンして1年が経過。来場者は110万人以上で、1日の平均は約3,000人。大きなイベントのない日でも1,500人程度の来場者がある。ところで、このたくさんの来場者は、まちなかの再生にどれだけ寄与しているのであろうか。

 市民会館のオープン直前、昨年6月の会議所会報のこの欄で、駅ビルや道の駅のように市民会館が魅力的な「場」を独り占めし、かえってまちなか全体の活力を奪うようなことにならないか、と指摘した。

 以前、JR東日本の駅ビル担当者と話す機会があった。私から「駅ビルがにぎわうとまちなかが衰退して困る」と話すと、その担当者は「実は社内でも問題になっている。駅ビルが繁盛して街が衰退すると、肝心要の鉄道乗降客が減ってしまう。街と駅の両方が大切であることが分かった」と。また道の駅は「道にも駅があっていいんじゃないか」との発想で、平成の初期から整備が始まった。地域の活性化につなげたい、との思いがあったが、道の駅

は見事にドライブイン化し、その1カ所ですべての用事が済んでしまう拠点と化した。鉄道駅にしても道の駅にしても、それは「駅」であって目的地ではない。そこでバスや自転車、徒歩などに交通手段を変え、名所旧跡や風光明媚な観光地、あるいはまちなかなどに足を運ぶためのターミナルだ。

 水戸では従来から駅ビルへの人の集中が顕著であった。それに加え、市民会館のオープンでMitoriO地区への人の集中が加速している。水戸駅周辺と泉町での人通りは増えたが、その2つに挟まれた南町での人通りは相変わらず少ない。市民会館への来場者が回遊していないのだ。

 この1年、市民会館のオープンで確かに水戸のまちなかのイメージは向上している。コロナ騒ぎの終了も相まって、若手を中心にまちなかへの出店意欲は旺盛だ。問題は、その新しいお店が長続きするかどうか。市民会館への来場者が自分のお店に回遊して来るのを待つのではなく、さまざまなイベント情報を先取りし、そのイベント来場者の特性を事前に分析し、それに合わせた営業展開が必要になるだろう。

 

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