第71回 「暮らし続けたくなる街」
「その土地の人々がその土地の衣食住を満喫すると、その土地と人々が光り輝く」。そんな言念のもと、NPOを組織し、まちづくり会社を立ち上げ、水戸の街の再生に向けた活動を続けてきた。古いアパートをリノベーションしてのチャレンジショップ運営、水戸が生んだ世界のオセロを活用した全県プロジェクト、水戸浪士が起こした幕末の最大事件『桜田門外ノ変』の映画化と地域活性化、水戸城址の歴史的景観づくりとしての白壁と門の整備、そして中心市街地の活性化。地域の資源を見直すこと。地域の資源を活用すること。地域の中に居場所を作ること。さまざまな取り組みを続けてきたが、一向に水戸の街は光り輝かない。欧州の都市の既成市街地のように、人々が優雅に暮らしている光景を、水戸では見ることができない。なぜか。ずっと考え続けてきた。
そして、最近になってようやく分かってきたような気がする。一つは街や地域の土壌、つまり地域性の問題。もう一つは運動論としての方向性・戦略の問題。
土壌・地域性については、11月に紹介した「寛容と幸福の地方論(島原万丈氏)」にヒントがあった。寛容性がないと若者は挑戦しない。そして、街に変化は起きない。若者にとっては居心地の悪い街だ。住み続けることはできない。そんな街に未来への希望はない。一旦外に出ると戻ってこない。水戸の街は若者に寛容だろうか。変化に寛容だろうか。
だから、まずは寛容性の醸成が大切である。その上で、地域を元気にするための方向性を明確にし、戦略を展開する必要がある。その地域再生戦略として最も大切なのは、9月に紹介した「ローカルファーストによるまちづくり(亀井信幸氏)」。つまりはふるさとファースト、水戸ファーストである。自分たちの街に愛情と誇りを持った選択と行動をすること。ふるさとを大切に思い、郷土への愛着と誇りを持って、地域内経済循環を実現すること。この運動により、キャッシュアウトさせないことが、地域の豊かさだ。
地域性としての寛容性の醸成、地域再生戦略としての水戸ファースト運動。暮らし続けたくなる街・水戸の実現に向けて、地域を挙げての「価値観の転換」と「行動」が必要である。それなくして水戸の再生なし。
