第72回 「まちなかに対する行政としてのメッセージは」
年明け早々の1月7日、「水戸ど真ん中再生プロジェクト」の会合が開催された。このコラムではあまり紹介してこなかったが、水戸ど真ん中再生プロジェクトは、官と民”外と中”をつなぎ具体的なアクションを生み出す新たなプラットフォームとして2016年に設立されたもの。茨城ロボッツのオーナーでグロービスの堀義人代表が座長だ。これまで茨城ロボッツの再生、グロービス経営大学院水戸校の開設、まちなかにぎわい拠点のM-SPO、シェアオフィスのM-WORK、水戸の歴史を紐解くM-HISTORY、まちなかアートのM-ART、コンベンションと良質な食事を提供するM-GARDEN、LUCKY FMの創設、LUCKY FESの実現など、民間活力によりさまざまな事業を形にしてきた。
久々に開催された今回の会合では、これまでの取り組みや現在進行中のプロジェクトの紹介の後、堀義人座長と高橋靖市長、そしてゲストの藻谷浩介さん(地域エコノミストで『デフレの正体』や『里山資本主義」の著者)によるディスカッション。今風の路面電車(LRT)の整備可能性についての議論の中での、藻谷さんのコメントが大変参考になった。
①東京一極集中と言うが、マンション住まいの東京の金持ちは、世界に通用しない。緑のある街で楽しく暮らすことが尊重されている。 ②日本は微地形や微気象など風土が多様で、そんな地方都市(地下鉄はないけど街は残っている)は面白い、楽しくやっている。メジャーリーグは無理でもMBAなら成立する街に期待。 ③行政が「ここは残す」と宜言したところに人は集まる。「尾根筋の水戸のまちなかは残すぞ」という明確なメッセージが大切。
ディスカッションの流れから、時代も土地柄も水戸にとって追い風である、加えて水戸市が明確なメッセージ、たとえば「LRTを建設します」のような方針を打ち出せば、まちなか再生の端緒をつかむことができる。こんな意味であろう。
確かにLRTは魅力的だ。でも賛否両論、現段階でその必要性について判断するほど機は熟していないので、その可否は今後の議論を待つこととする。それでは水戸市は「まちなかを残す」という強力なメッセージを提示することは無理なのか。いや、実は既に示している。水戸城跡やアダストリアみとアリーナ、そして市民会館の整備だ。民間サイドからも、水戸ど真ん中
再生プロジェクトによるさまざまな取り組み、加えて常陽銀行の新本社ビルの建設も決定している。これだけの投資が集中していることから明らかに、水戸のまちなかは残る。だから昨年度来、期待感のためかまちなかでの新規開店ラッシュが続き、空き店舗の補助金が不足するほどにもなっている。
これらの投資が無駄にならず、さらに新しい価値を生み出せるよう、産官学民が連携した取り組みを続けていきたい。