第81回 「景観まちづくりの作法④」
●建築デザインの規制
建物のデザインについて考えてみる。建築関係の方との会話で分かるのは、建物の設計の際に心掛けていることは、建築基準法やさまざまな規制、敷地による制限などの範囲内で、最大限の可能性、独自性を発揮することのようだ。
ここで気になるのは、建築設計の専門家を何と呼ぶか。「建築士」か「建築家」か。建築設計の専門家で、その専門技術を有する技術者であると考えれば、それは建築士であろう。国家資格の名称にもなっている。
その一方で、ご自身を「建築家」と称する方もいる。印象としては、技術者というよりも、芸術家のイメージが近い。建物のデザインやコンセプトに重点を置き、その外観、空間の使い方、素材の選定などを創造的に考え、独自性の高い作品を提案をする。
建築士が芸術家になりきると、特徴的な独自のデザイン、目立つ作品を街の中に置きたくなる。その結果が実は、日本の景観を壊し続けてきた。美しい調和の取れた景観を考えるなら、人目に触れる建物の設計には、極力設計者の個性を消し去り、周辺の歴史的成り立ちを含めた雰囲気に調和したデザインや素材であることが求められる。どうしても芸術家であることを主張するのなら、その作品は自宅か倉庫か博物館の中へ納めてほしい。街の個性より一建築士の個性を優先させて良い、という道理はない。
建築士の見識に期待したいところではあるが、まずはデザインや色彩、素材などについて、もっと明確かつ厳格なルールを提示する必要があろう。ルールは邪魔者ではない。社会をより豊かにするための必要不可欠なもの。暮らしやすく、住みやすく、誇りの持てる価値のある地域にするために。
●土地利用の規制
牧歌的な雰囲気の農村地域に広がる美しい田園風景。そこにポツンと近代的な建物ができたら、多くの方はデザインや色彩、素材などの面で違和感を感じることであろう。必ずしもその建物のデザインが悪い、ということではない。その建物の立地する場所がふさわしくないのだ。その意味で、都市的な土地利用と田園的な土地利用が混在しないように、土地利用は大いにコントロールすべきである。
そもそも昭和43年に施行された新都市計画法は、無秩序な開発を抑制し、住みやすく、商工業が発展しやすい都市を作ることを目指している。都市の無秩序な拡大を防ぎ、計画的な土地利用を促進する。住民が快適に生活できるよう、公共サービスやインフラの整備を行う。商業や産業の発展を支援し、地域経済の活性化を図る。
そのために、各都道府県は都市計画区域を指定し、これを「市街化区域」と「市街化調整区域」に区分している。市街化区域は、都市の発展が見込まれる地域であり、開発が許可される区域。一方、市街化調整区域は、無秩序な開発を防ぐために、原則として開発が制限される区域。
このルールが守られることで、都市部と田園部が区分され、メリハリのある美しい景観を守り育てることができる。しかし、市街化調整区域であっても市町村の条例などにより指定された区域内であれば、宅地開発などができる。これは、景観まちづくりの観点から、また都市計画法の趣旨からしても、芳しくない。
(つづく)

▲世界遺産 白川郷の風景