第82回 「景観まちづくりの作法⑤」
●緑のブリッジ
戦後80年が経過し、今さら日本国内に立地するさまざまな建築物のデザインをコントロールするのは至難の業、不可能である。明確かつ厳格なルールを定め、建て替えの際に直してもらう、という考えもある。それはそれで効果はあろうが、使用状況やメンテナンス次第で木造住宅は約65年、RC造は約120年とされている。建て替えまでに時間が掛かり過ぎる。
そこで、「緑のブリッジ」という考え方がある。建物と建物を緑でつなぎ、見せたくないところを隠す。また、緑で見え隠れすることによる奥行きを演出する。既存の建物のデザインや色彩、素材などを変えることなく、建物同士の一体感や連続性、美しさ、空間的ゆとりを生み出せる。水戸の街の隅々に、もっともっと緑を配置することにより、水戸の街の景観は格段に美しさと潤い、そして豊かさを備えることができる。
●パブリックマインド
ルールづくりや緑の配置は大切だが、景観まちづくりの第一歩は「パブリックマインド」と「真善美の意識」の醸成である。パブリックマインドがあれば、制限や禁止、違反の摘発がなくても、みんなが、自分なりの「真・善・美」で自主的に自身の行為をコントロールできる。「禁止?違反?そんなことやらないよ!それが当たり前!」といった世界である。
欧州の街が良い例である。彼らは自分たちの暮らしぶり、日常を普通に見せているだけで、特別に観光用に着飾っているわけではない。昔ながらの衣食住そのものを見せている。自分たちの資源を使い倒し満足しているだけ。それが美しい。売れる。観光資源になっている。風景として、観光地として素晴らしい。厳しいルールもあるが、住む人々はそのルールに従い、結果として得られる美しい街並み、地域としての価値を享受し、誇りに思っている。個々人が好き勝手に個性を出すことは、罪だ。
パブリックマインドの醸成により、個性豊かな美しい景観が自主的に守り育てられる。当たり前のことだ。官の規制と民の主体的行動。この調和こそ、官民連携による景観まちづくりだ。
●個性は地域最大の魅力で競争力
パブリックマインドを持って、暮らしの中の美しい風景を守り育てよう。その美しい風景を活用しよう。使い倒そう。暮らしそのものが美しく、その土地で豊かに幸せに暮らそう。歴史的、文化的資源を美しい景観の中で大切にし、自分たちの生き方が輝くことによって、他の手本となろう。資源を使い倒す日常こそ「個性」であり、その延長に「魅力」や「競争力」が、「持続可能な豊かさ」がある。個性は地域最大の魅力であり、最大の競争力である。
日本の長い歴史の中で現代のように景観が乱れたのは、たかだか戦後80年だ。ルールを決め、大人はもはや無理としても、子どもに対する教育から始めれば、その子の孫の時代、80年後の来世紀には、美しい日本、美しい水戸がよみがえるのでは。
(おわり)

▲緑のブリッジ